世界一周特典航空券で巡る南米旅⑩ サグラダ・ファミリア 「生誕のファサード」塔・亀・扉・ロザリオの回廊

今回は、「生誕のファサード」の中で前回紹介できなかった4基の塔、2頭の亀、4面の門、そして生誕のファサードの横に続く「ロザリオの回廊」の彫刻たちを観ていきましょう。
使徒へ捧げられた4基の塔
サグラダ・ファミリアには完成時に計12本の鐘楼(塔)が建てられ、それぞれがキリストの12人の使徒を表すよう設計されています。

こちらが、生誕のファサードにある4基の塔。
左から順に「聖ベルナベ(Barnabas)」「聖シモン(Simon)」「聖ユダ・タダイ(Jude)」「聖マチア(Matthias)」に捧げられています。

「生誕のファサード」赤丸の部分に4人の使徒の坐像があります。

使徒たちは高い場所からバルセロナの街や参拝者を見守るように「座った姿(坐像)」で彫刻されており、遠くからでもどの塔がどの使徒のものか識別できるように、坐像の左側に名前、右側に使徒の称号(APOSTOL)が刻まれています。

こちらは、左端の聖ベルナベの坐像。
穏やかな表情で、福音を語る教師に相応しい落ち着いた姿勢でバルセロナの街や参拝者を見守っています。
「聖ベルナベの塔」とその使徒坐像は、ガウディが存命中の1925年に完成しました。ガウディ自身がその目で完成を見届けることができた唯一の塔と使徒の彫刻であり、歴史的にも極めて重要な部分です。

これは、塔の尖塔部を切り抜き、横に並べた写真です。
尖塔はかなりカラフルになっています。
黄緑色の球体に囲まれた十字架の下には、各塔の使徒のイニシャルが記されています。
左から
- B → 聖バルナバ(Barnabas)
- S → 聖シモン(Simon)
- I → 聖ユダ・タダイ(カタルーニャ語・ラテン語表記の Iudes / Iudas)
- M → 聖マティア(Matthias)
なぜ3番目が「I」なのか疑問だったのだけど、調べて納得。
上記イニシャルの下に配置されているモザイクは、ベネチアン・グラス(ガラスのモザイクタイル)や、細かく割ったセラミックの破片(ピース)を職人が1枚ずつ手作業で敷き詰めて作るトレサディス(Trencadis)技法が用いられています。
尖塔部の黄色やオレンジ、赤は「神の栄光」「聖霊の炎」「太陽の光」を象徴しています。地中海の強い太陽の光を浴びたときに、塔の先端がまるで自ら発光しているかのようにキラキラと輝き、バルセロナの街のどこからでも天の光が見えるように設計されています。

また、塔の中央部(赤矢印部)には、波打つ「Sanctus」が音符の様に配置されています。

鐘塔である使徒の塔に刻まれた“Sanctus”は、ミサで歌われる『聖なるかな』の祈りです。
ガウディは文字をらせん状に配置することで、鐘の音と祈りが天へ昇る様子を石で表現しました。サグラダ・ファミリアでは、建物そのものが神を賛美する“歌う教会”として設計されているのです。
ウミガメとリクガメ
有名な2頭のカメについて。

ファサードに向かって右側(写真手前)の「マリアの柱」の土台には、「リクガメ」、左側(写真奥)の「ヨセフの柱」の土台には「ウミガメ」の彫刻がそれぞれ観られます。

これは、ウミガメ側から観た写真。
ガウディは海と大地という被造世界全体が、キリストの誕生を支えていることを表現しました。
ウミガメは海側、リクガメは山側というバルセロナの地理とも対応しています。
ウミガメ

ヨセフの柱の土台となっているのが、ウミガメ。
甲羅が扁平で、パドルの様な足ひれもついています。

後ろ姿

そして口の中。
これが有名な「雨水を逃す排水溝の役目をしている」口の穴。
しっかり観てきました。
リクガメ

こちらが、マリアの柱の土台となっているリクガメ。
ふっくらと丸みのある甲羅で、足にはしっかりとした爪がみられます。

後ろ姿の方が、特徴が明瞭ですね。

こちらがお口の中。
私は、水と関連のある「ウミガメ」だけに排水溝の穴があるのだと勘違いしていましたが、「リクガメ」にもちゃんと排水溝の穴はありました。
生誕の扉の昆虫たち

生誕のファサードには、正面に門が3つあり、
- 左側:聖ヨセフに捧げられた「希望の門」
- 中央:イエス・キリストに捧げられた「慈愛の門」
- 右側:聖マリアに捧げられた「信仰の門」
があります。
- 希望の門:希望の扉
- 慈愛の門左側:慈愛の扉
- 慈愛の門右側:智慧の扉
- 信仰の門:信仰の扉
と「生誕の扉」とはこれら4つの多色青銅製 観音開きの扉を指します。
*慈愛の門はイエスの柱で仕切られ、2つの扉が存在する。

こちらは、慈愛の門の慈愛の扉。
この様に4つの扉には、蔦が広がるデザインで統一され、その中に昆虫や小動物などがちりばめられています。


カブトムシ、ハチ、トカゲ?ヤモリ?


キリギリス、クモ、てんとう虫、カタツムリ、

この扉には、虫嫌いな私はゾッとする数の虫がうじゃうじゃいます。

この茶色い円形の部分、何でしょう?
かなり調べたのだけど、分からずでした。
これら4枚の青銅扉も、外尾氏が中心となって制作した作品です。
ロザリオの回廊(ロザリオの門)
サグラダ・ファミリアの「ロザリオの回廊(聖母ロサリオの回廊)」は、生誕のファサードの右傍らに位置し、アントニ・ガウディが存命中に設計・完成させた非常に重要な空間です。
最大の特徴は、壁一面を埋め尽くす薔薇(ロザリオの語源)の繊細で立体的な彫刻と、自然光が降り注ぐ美しいドーム構造です。ここではカタルーニャの伝統的なボビンレースのような装飾美が楽しめます。
また、単なる美の追求だけでなく「誘惑」をテーマにした彫刻群が配置されているのも特徴です。19世紀末のバルセロナで実際に起きた無政府主義者の襲撃事件を反映し、「悪魔から爆弾を渡される男」の像など、当時の生々しい社会情勢と信仰の勝利が象徴的に描かれています。スペイン内戦で一度破壊されましたが、現在は見事に復元されています。

こちらの写真は、回廊の中へ入ってすぐ入り口方向へ振り返った位置から撮影しています。
ガウディの設計では、聖堂の建物の外周をぐるりと一周取り囲むように回廊が配置されています。
写真の部分は、生誕のファサード側にある出入り口の門で、「ロザリオの門」と呼ばれます。
ロザリオの門で観るべき彫刻のほぼ全てが写っています。
ロザリオの聖母

ロザリオの回廊における主題となる彫刻で、中央に幼子イエスを抱く聖母マリアが立ち、その左にロザリオ信心を広めた人物として知られる聖ドミニコ、右に聖ドミニコとともにロザリオの聖母に仕える人物として聖カタリナが配置されてます。
聖母マリアの足元には、星型の面を持つ中空の幾何学的な球体が置かれており、中の暗闇に対して星の形がくっきりと浮かび上がる非常に緻密な職人技が見られます。
門の尖頭アーチの上には、ラテン語で「Sancta Maria Mater Dei(神の母聖マリア)」と刻まれていますが、これも文字が背景の暗闇に浮かび上がるように立体的に彫られています。門全体に散りばめられたバラの装飾とともに、ロザリオ信心を表現しています。
旧約聖書の王たち

ロザリオ門では、旧約聖書の祖先たちがキリストへの系譜を象徴しています。
左側から
ダビデ王:旧約聖書のイスラエル王。
ソロモン王:ダビデ王の子。知恵の王として知られている。
イサク:アブラハムの子であり、旧約聖書の族長の一人。
ヤコブ:イサクの子。イスラエル十二部族の祖とされます。
義人の死

信仰に生きた人(義人)の最期を表しています。
横たわる義人を、聖母と幼子イエスが迎えに来て、聖ヨセフが見守ります。
聖ヨセフは「善き死(Good Death)の守護聖人」として知られています。
男の誘惑

悪魔が青年にオルシーニ爆弾を差し出します。
オルシーニ爆弾は19世紀ヨーロッパで知られた爆弾で、暴力や破壊の象徴です。
修復にあたり外尾氏は、青年の指先が爆弾から少し離れていることに気付きました。
つまり、青年はまだ爆弾を受け取っていない。その一瞬の葛藤を表情に込めたそうです。
青年は
- 正義感
- 社会を変えたい思い
を持ちながら、暴力に踏み出すか迷っています。


悪魔のモデルが何なのかは、調べても分からなかったけど、長い尻尾を持つ両生類のような形状でした。
青年の指は、確かに爆弾から浮いていますね。
女の誘惑

この作品は、正面だけを観ても理解できません。


ぐるっと後へ回って、初めて全体像が掴めます。
魚の姿をした悪魔が、若い女性に金袋を差し出し、富や貪欲へ誘惑します。
外尾氏は、少女は欲深い人物ではなく、困っている人を助けたいと思う優しい少女と解釈しました。
だからこそ、悪魔は「お金があれば人を助けられる」という形で誘惑します。
単なる金銭欲ではなく、善意を利用する誘惑なのです。
ガウディの意図
ガウディは、ロザリオの門において「善」と「悪」の対比を表現しており、
- 義人の死(信仰に守られた安らかな死)
- 男の誘惑
- 女の誘惑
という三つの主題を配置しました。
義人は死の床にありますが、聖母マリアと幼子イエスが迎えに来ることで、信仰によって救われることを象徴しています。一方で、向かい側には悪魔による誘惑の場面が置かれ、人間が善悪の選択を迫られることを示しています。
この対比は、ロザリオの祈りが信仰を守り、救いへ導くというメッセージを視覚的に表現したものです。
おまけ 生誕のファサード両端のカメレオン

赤丸の位置に、カメレオンの彫刻があります。


この「カメレオン」の意味するところは何か?
これは、カメとの対比なのです。
- カメレオン: 状況に合わせて姿を変える「変化」
- カメ: 不変でどっしりと動かない「不変」や「安定」
これらは、移り変わるものと変わらないものという対比を通じて、自然界の多様性や時の流れを表しているとされています。
本当に、細部にまでこだわり、意味を持たせたガウディのデザインに感服しました。
